妻(1)

時刻(time):2022-05-31 23:18源泉(Origin):net 著者(author):admin
いつもの週末のように、妻の洋子のスーパーでの買い物について行った時のことだった。 「山本さん、こんにちは。お元気?」 ピクッとして妻が振り向いた。 「あっ、奥様・・・

いつもの週末のように、妻の洋子のスーパーでの買い物について行った時のことだった。
「山本さん、こんにちは。お元気?」
ピクッとして妻が振り向いた。

「あっ、奥様・・・はい」
とても緊張した様子で返事をしている。
声をかけた相手は50前後の大柄の女性だった。
「また家に寄ってね。待ってるわ。」
「はい・・・ありがとうございます。」
妻は顔をなぜか赤らめて、もじもじした様子で返していた。

「だれだい?」
「同じマンションの人で、野村さんていうの。ときどきお家にお邪魔して、おしゃべりしてるの。」
「なんか緊張してたみたいだけど」
「ううん、なんでもない・・・」
帰り道、妻はなぜか困ったような様子をみせていた。

2年前に結婚した妻の洋子は28歳で、以前勤めていた会社は辞め、いまは週3日だけ、パートとして働きに出ている。平日も少し時間ができ、近所の奥さんたちの中にも知り合いができたと喜んでいた。スーパーで会った野村という女性もその内の一人だと思ったが、今日の妻の様子は気になってしかたがなかった。

「あなた、今度の土曜日はゴルフでしょ?」
「うん」
「あの・・、野村さん・・、この前スーパーで会った人・・、覚えてる?」
妻はもじもじしながら聞いてきた。
「ああ、ちょっと大柄の」
「ええ・・、野村さんが・・、土曜日に家に来たいって言ってるんだけど・・、いい?」
「いいよ、お前も野村さんのお宅に行ってるって言ってたもんな」
「2時から2時間くらいだから、夕食の準備は大丈夫だし・・」
「いいよ、おれも遊んでくるんだし」
「ありがとう・・」
妻はほっとしたような様子を浮かべた。

金曜日の夜、明日あの野村という女性が来るというのを思い出し、この前のスーパーでの妻の様子がまた気になりだした。なにかに怯えているようでもあったし、万が一妻が脅迫されているようなことはあるまいと思いつつも、少し考えて、リビングの隅にビデオを分からないようにセットすることにした。タイマーにして、土曜日に2時からスタートするようにセットして床に就いた。

土曜日、ゴルフから帰ってくると、妻はいつものように迎えてくれたが、心なしか疲れているようにも見えた。夕食後、妻が入浴している合間に、セットしたビデオを見てみた。

ビデオが始まると、ソファーに座った、中年の女と妻が目に入ってきた。確かに、見覚えのある野村という女性だ。妻が淹れたと思われるコーヒーを飲みながら談笑しているようだ。しばらくして、中年の言葉に私は驚いてしまった。
「今日はね、洋子にって思って、うちの店で扱ってる下着を持ってきたのよ」
「奥様・・、いいえ、私たくさん持ってますから・・」
「洋子の下着は私が選びたいなって思ってるの」
妻を呼び捨てにしている・・・
「いえ、奥様・・・」
「いいから、そこで着ているものを取りなさい」
「いえ、困ります・・」

残念ながら、妻が風呂から上がったようだ。続きはまた、後日見ることにした。

しかし、ベッドに入っても動悸がなかなか収まらなかった。

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