優しい背中 3

時刻(time):2022-06-16 15:38源泉(Origin):net 著者(author):admin
この話は続きです。はじめから読まれる方は「優しい背中 」へ 優子の言葉が頭から離れなかった。優子のことは好き。それは間違いない。でも私の心の中にはどこかに瞳さんがず

この話は続きです。はじめから読まれる方は「優しい背中」へ

優子の言葉が頭から離れなかった。優子のことは好き。それは間違いない。でも私の心の中にはどこかに瞳さんがずっと居続けてる。憧れにも似た存在として。それで優子のことを本当に愛してると言えるのだろうか。

もし仮に瞳さんがレズビアンで私の告白を受け入れてくれたら私はどちらを選ぶのだろう。(有りもしないことを考えていてもしょうがない。優子の
ことが好きなんだから今はそれでいいじゃない)私は自分を無理やり正当化して気を楽にしたかった。実は週末その瞳さんの家に泊まることになっていたのだ。
「ピンポ-ン」
「どうぞ、あがって~」
「ワーイ、おじゃましま-す。・・・瞳さん、相変わらず部屋散らかってるね。そんなんじゃお嫁さんに行けないよ」
「うるさい。子供のくせに、大人をからかうんじゃないの。アタシはこの方が落ち着くのよ」
「でた。いつもの口癖。『子供のくせに、大人をからかうんじゃない』ひどいなあ~。私もいつまでも中学生じゃないんだからね。花のセブンティーンよ。どう少しはセクシーに
なってきたでしょ」
私は腰をくねらせおどけてみせた。
「なま言ってんじゃないの。アンタなんてまだまだ子供で充分。悔しかったら男の一人や二人連れてらっしゃい。男は私みたいなボディに寄ってくるのよ」
瞳さんも私の真似をし腰をくねらせ、二人してくねくねくねくね踊るようにおどけた。
「ぷっ、あはははは」
「ははははは」
私達はいつもこんな感じだ。瞳さんはその容姿とは裏腹に男勝りで3枚目で超アバウトな性格だ。私はこの人といると素直に自分が出せれる。(やっぱりこの人は特別だ)と思った。

「さあ、バカやってないで宿題みせなさい」
そう、私はなにも遊ぶだけに泊まりに来たのではない。夏休みの宿題を教わりに来たのだ。
私は、頭を抱えながら高校生の宿題を必死になって教えている瞳さんをジーっと見つめていた。ポニーテールの黒いサラサラの髪。キリッとした瞳。長いまつ毛。細く長い指。華奢な肩。
大人の女性を思わせる張り出た胸。細いウエスト。長くスベスベの足。溜息が出そうなほど完璧な大人の女性だ。やはり憧れの女性なのだ。故に瞳さんとどうこうなると考えるほうが
間違っているのだ。ましてや瞳さんには彼氏もいる。側にいられるだけでいいんだ。そう自分に言い聞かせた。
「こら、なにボーとしてるんだ。もう教えないよ」
「ごめんなさい。教えて教えて~」
「からかうんじゃないの」
私達は楽しみながら勉強し、宿題が全て終わった時には11時になっていた。
「あら、もうこんな時間。可奈ちゃんもう寝ましょ。狭いけどおふとん1つしかないから、ベッドで一緒に寝ましょ」
「う、うん」
ドキドキした。こんなケースは初めてだ。瞳さんと一緒のふとんで寝れる。初体験のとき以上に胸が高鳴っていた。風呂上りのバスタオル1枚の瞳さんを見たときも興奮したが、
いいにおいのする瞳さんを横に今夜は寝れるだろうか、心配になる。

「キャー、女子高生と添い寝なんて、世の男性が羨むだろうなあ。可奈ちゃん何無口になってんのよ。大人しくしてるとお姉さん襲っちゃうぞ-」
(襲ってぇ~)やはり今晩寝れそうにない。だって瞳さんの胸が時々腕に当たる。足も当たる。息もかかる、そんな近い距離で寝てしまったら勿体無い。
それからふとんの中で私達はいろいろ話をした。それだけで幸せだった。12時を回った頃だろうか。瞳さんの携帯が鳴った。一瞬瞳さんの表情が曇った。
「可奈ちゃん、ちょっとごめん。もう寝てて」
そう言うと瞳さんは携帯を持って寝室から出て行った。私は一人取り残され、急に現実に戻された感じがした。不安が胸に広がり余計に眠れない。1時間しても瞳さんは戻って
こなかった。私はいてもたってもいられずふとんを出てリビングに向かった。そこに瞳さんの姿があった。泣いていた。目は真っ赤に腫れ、床には飲みかけのウイスキーがあった。
あの気丈でかっこ良くて男勝りにもみえた瞳さんが、か弱く泣いていた。すごく弱々しく小さくみえた。
「ぐすっ、あら、起こしちゃった?ごめんね。見っともない姿見られちゃったわね。ぐすっ、はあ-、もう付き合って5年になるの。あいつ、オンナ癖が悪くてね。何度泣かされたか
わかんない。それでも信じていたの。最後には私のところに帰ってくるって」
瞳さんは誰にというわけじゃなく語り始めた。具体的に彼氏のことを話してくれたのは初めてと言ってよかった。
「でももう疲れちゃった。だからもう終わりにしようって別れを告げたの。そしたら厚志のやつ、泣いてあやまるの。俺には瞳しかいないって、これからは心を入れ替えるって。
ふふ、もう遅いわよ。ふふふあははは、ふんふんぐずぐずえ~ん」
そう言って瞳さんは床に泣き崩れてしまった。自然と足が瞳さんのほうに歩みだす。(私は何をしようとしてるの?傍に行ってどうするつもりなの?)いつの間にか私も泣いていた。
泣きながら床に伏せている瞳さんをそっと抱き起こした。(ど、どうするの?だめ、言っちゃダメ)
「好き。瞳さんが好き。愛してます」
私は瞳さんにそっと優しくキスをした。
-つづく-

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